大人になってからというもの、蕎麦を異常に好きになった。
もともとそれなりに蕎麦が流行っている地域なのもあるかもしれないが、ちゃんと味わって食べると蕎麦ってなんだかおいしい。
天ぷらもお店で食べるものはとても魅力的だ。
蕎麦屋さんでお酒を飲むのも憧れる。夜、天ぷらやツマミなんかを食べながら日本酒をいただき、最後にお蕎麦で〆る。これはいつか絶対にやると決めている。
テレビや雑誌でお蕎麦屋さんを紹介しているとしっかり見てしまう。
昨年末にテレビであるお蕎麦屋さんを紹介していて、天かすに青のりが入ったものをかけそばにのっけるという、ありそうであんまりないお蕎麦をみた。
すごく美味しそうで、近くまで行く機会があったら絶対行こう!と心に決めていた。
年が明けて、ようやくそのお蕎麦屋さんに行けることになった。
天気のいい日で、寒い中たっぷり散歩をしてから向かうことにした。
はじめてのお蕎麦屋さんということで、Google Mapをよく確認しながら、それはもうワクワクして行った。
しかしお蕎麦屋さん近づけど、お昼時にも関わらず思ったほど人影がない。
もしや…と思ってみてみると………張り紙。
見事にお休みだった。
定休日ではないことは確認済みだったが、まさか臨時休業とは………
僅かではあるが落ち込みながら、また歩き始める。
蕎麦を食べに来たのに蕎麦以外のものを食べるのはないな…
もう蕎麦の気持ちになってるもん…
本当は新規開拓したかったけど、知ってるお店です手を打つか…
アレコレ考えながらも、すぐ近くにある何度か食べたことのあるお蕎麦屋さんへ向かった。
観光客の方や接待で使われる方も多いお店だったが、時間を少し外したのが幸いして、すぐに案内してもらえた。
お店の人の笑顔が温かった。
メニューを眺めると温かいそばの欄に『桜えび天のせ蕎麦』を見つける。
いつもはざる蕎麦をよく頼むのだが、その日は本当に寒かったので、温かいのもいいね、と思った。
桜えびの天ぷらなら、かき揚げタイプかバラバラタイプのどちらかだろう。もともとたぬきそば的なものを食べたくて来たのだから、妥協案としては申し分ない。
温かいそば茶が運ばれてくるなり、桜えび天のかけそばを注文した。
お蕎麦屋さんに行くとまず悩むのが温かいかけそばにするか、冷たいざる蕎麦にするか、だ。
お店の売りとして鴨そばがあるならそれも候補になる。
この日の温かいそばというチョイスは間違いないはず。晴れているのにとんでもない寒さだったし、ダラダラ散歩してたせいで体が芯から冷え込んでいる気がしていた。
しばらく待っていると蕎麦がやってきた。
桜えびの天ぷらは、一匹ずつ分離しているバラバラタイプ。全体に桜えびが嬉しいくらいに散らされている。
小皿にスライスされた大根の漬物がついていたが、見た目が完全にガリだった。
早速蕎麦をすする。
あちい。
桜えびの天ぷら。
サクサク、ザクザクしている。
とってもおいしい。
つゆがしみた天ぷらとそばがうまく纏まる。
あちい。けど、とってもおいしい。
途中からネギも程よく絡ませながら食べる。
天ぷらとつゆと蕎麦だけの空間に、ネギのあおくてからい風味が追加されて、またおいしい。
桜えびって意外と大きい。しっかりしている。
見た目も食感も、主張してくる。
時折熱さを感じながら、夢中で食べ進めた。
蕎麦を粗方食べ終えると、あとはレンゲで宝探しだ。
残った桜えびと天かす、つゆを味わいながら、細かくなった蕎麦を探していく。
天ぷらの油分とそばつゆってすごくおいしい。
もう少ししょっぱさが控えめだったら、確実につゆまで飲み干していた…かもしれない。
お水をグッと飲み干して、一息ついてからお会計へ。
食事後のお水ってなんだかおいしい。
ドラマ・孤独のグルメの井之頭五郎も、よく最後に飲み物を飲み干してから「ごちそうさまでした」と言うイメージがあるが、アレ、とても良く分かる。
たまには温かいお蕎麦もいい。
寒い日は特にそうだ。
寒い日に頑なにざる蕎麦を頼むと、おいしいのはおいしいが、ちょっと後悔する。
翌日。
ゴールデンタイムのテレビ番組を見ていると、芸能人らが蕎麦を食べていた。
ざる蕎麦。
ざる蕎麦……
やっばざる蕎麦も食べたかったよね(白状)
そば自体の美味しさはざる蕎麦が一番よく感じられるし、そば食べた!って気になるのもざる蕎麦なんだよね…
この先きっと同じような後悔を何度もするんだろうな。
でも体は一つ。1食で食べられるそばは一つだ。