エリック・サティというのは奇妙な人だ。
彼の作曲した『ジムノペディ』や『干からびた胎児』といった曲の、なんとも奇妙で謎めいたタイトルは「おかしなタイトルを付けて気を惹こうとする中二」的なセンスを感じないでもない。褒めている
今回紹介したいのは、サティの奇妙な楽曲としてやはり有名な『3つ(6つ)(7つ)のグノシエンヌ』だ。
3つなの?6つなの?7ってなんじゃい!!って感じですが、正確には3つです。でも一般的には6つだし、たまに7つになります。ほんとですよ
でも書きたいのはこんなことじゃなくて、『グノシエンヌ第4番』のこと。
以下、動画を貼っておきますので、実際に聴きながらお読みください。
サティ: グノシェンヌ 第4番~第6番 1. 第4番 pf.須藤千晴:Sudoh,Chiharu
グノシエンヌは1~3番までと4番5番6番で雰囲気がけっこう違う。
というのも4~6番はサティの死後に見つかった作品であり、作曲時期が3つのグノシエンヌと近かったからという理由で『6つのグノシエンヌ』として第4番~6番が追加されたわけです。第4番~第6番には『グノシエンヌ』という名前はついていなかったのです。
第7番に関しては『梨の形をした3つの小品』の1番として知られている曲です。この曲はもともと「星たちの息子」として作曲されていたものを「グノシエンヌ」としタイトルを変え、さらに『梨の形をした3つの小品』に転用した経緯があるらしく、このことから稀に『グノシエンヌ第7番』とされるようです。
サティが『梨の形をした3つの小品』にしたならそれでよくね?って感じですけどね。
その辺はたぶん、作曲中のいろんな出来事が重なってこうなったのだろうなって感じです。『梨の形~』は大好きだったドビュッシーに「形式的な曲をつくったら?」的なことを言われたために作ったものらしいので、その時に作っていた『グノシエンヌ』の曲をなんらかの理由で『梨の形~』にしたのでしょうね。
ということから、第7番だけは4~6番よりも『グノシエンヌ』といわれるだけの明確な理由があるようです。
で、グノシエンヌ第4番なんですが。
この曲は左手のアルペジオが特徴的な曲です。深く低い音から始まる左手がなんとも仄暗い印象を受けます。
浅く浮き上がっては沈んでいくのを繰り替えず左手の音と、酒に酔って頭の中がぐるぐるしているかのような右手。そんななかにわずかに感じる美しいメロディが得も言われぬ良さを生み出している。
グノシエンヌ第1番~3番は、その独特な音と楽譜中の奇妙な指示から、頭の中の、思考の世界のような雰囲気を思わせますが、第4番と第5番は情景を感じるように思います。
グノシエンヌ第4番の暗く沈み込んだ中の美しさは、ベートーベンの月光の第一楽章の綺麗さに似ているように、個人的には感じています。まあ、ベートーベンの月光はかなり感情的なように思いますが…グノシエンヌはもっと物憂げそう。暗い感じのアルペジオなら月っぽいのかって話ですよね。そこのところはよくわかりません。というか、アルペジオ自体よくわかりませんし(丸投げ
というわけで、グノシエンヌ第4番の話でした。
何で急にこの曲について書きたくなったかというと、単に好きでたまに聴きたくなるからだけなんですけどね。
最近は生コンタクトレンズのCMでグノシエンヌ第3番が使われているので、やっぱりシュールな雰囲気とか奇妙な感じを演出するのにグノシエンヌって有効なのかなぁなんて思わされます。この曲の楽譜に記された へんてこ指示もすごい面白いのでいずれ紹介してみたいですね。
あ、そういえば、『グノシエンヌ』って言葉の意味がなんなのかっていうのは特に書きませんでしたが、言葉の由来は割と本当に謎なので、気になる人はググって自分で納得のいく解釈をしたらいいと思います。個人的には「グノーシス」っていう言葉から発想を得た説がしっくりしますね。
こういう謎の言葉を作り出しちゃうあたり、中二も真っ青なサティのひねくれっぷりを感じられて好きです。
取り留めのない紹介記事になりました。でも言いたいことは言ったからいいかー。