地元のオーケストラの定期演奏会に行った。
経緯的なものは下の記事に書いてある通りだ。
とにかく楽しみにしていた演奏会。
普段イベントごとに参加したり わざわざ足を運ぶということはほとんどないのだが、春に聞いた『魔笛』序曲の感動が私を突き動かしているのだと思う。
初めて味わう会場の雰囲気
熱心なファンも多いようで、思会場にはっていた以上に人が多かった。
それに、聴衆と楽団の関係者、演奏者たちの距離感が近いというか、和気あいあいとしているというか、お互いに慣れ親しんだ雰囲気を感じられて驚いた。
それまでの私のイメージだと、
指揮者・奏者 = 神、高みにいる、触れることのできない存在
聴衆 = ほぼ平民、鑑賞力はピンからキリまでいろんな人がまじりあっているカオス
…というふうに、天と地ほどの差を感じていた。大げさに感じるかもしれないが割とそんな感じに思ってました…
「演奏者たちは神」という謎イメージを一蹴したのが、公演前に行われるロビーコンサートだ。
その名の通り、ホールの外 ロビーで行われるごく小規模なコンサートで、とくに舞台があるわけではなく、演奏者も聴衆と同じ高さのフロアで演奏する。ロビーに備え付けのベンチがあるだけで、基本みんな立ち見。
このロビーコンサートをいい位置で聞くために、入場してすぐロビーコンサートエリアの真ん前に陣取る人もいた。 勝手のわからない私は人に流されるような形でロビーコンサートの場所に漂着したのだが、そこそこ見やすい場所に落ち着いた。
ロビーコンサート演奏前のMCは まさに地元の楽団といったフレンドリーさで、もちろん丁寧さはあるしきちんとしたMCなのだけれど、とても自然体で進行しているのを感じられた。
そして演奏者の方たちがやってくる。
…近い。
本当に近い位置に演奏者がいる。
目の前で演奏してもらえる。
なんという素敵体験。
ドビュッシー『クラリネットのための第1狂詩曲』
ロビーコンサートの演奏曲は ドビュッシーの「クラリネットのための第1狂詩曲」。
MCさんが「この曲、聞いたことのあるという人はいますか?」と、聴衆の挙手を促すも、目に見える範囲には挙手している人は見られなかった。
どうやらそんなにメジャーな曲目ではないようだ。
「クラリネットのための第1狂詩曲」はドビュッシーがパリ音楽院の卒業試験課題として作曲した曲とのこと。
今回の演奏の編成はヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット、ハープだった。
私の中で、ドビュッシーは「なんとなく掴みどころがなくフワフワした雰囲気」というイメージが強く、実は好んで聴いたことはそんなになかった。
今回ロビーコンサートで聴いた曲はドビュッシーらしいミステリアスでフワフワした感じもありながら、クラリネットのしっかり芯のある演奏は聴きごたえを感じた。またハープが作品の幻想的な雰囲気を際立たせているようだ。
ドビュッシーってこんな曲も書くんだ…と、今まで気にしたことのなかった人の意外な一面を見たような気持ちになった。
ピアノ曲だけ聴いてたらきっと知ることはなかった曲。クラリネット、フルート、ハープ、そして弦が奏でる音楽は、ドビュッシーの世界をとても鮮やかにより美しく見せてくれたように思う。
いよいよ公演!マエストロのプレトーク炸裂
まだ始まってもいないというのに、ロビーコンサートのクオリティがすでに素晴らしいという贅沢すぎる定期公演。これはもう否が応でも期待が高まってしまうというもの。
ホールに入り席に着く。ちょうど舞台の高さと同じくらいの席だった。
客席の照明が暗くなると、指揮者とロビーコンサートでMCをやっていた方が舞台へ。
10分ほどのプレトークでは、最近の楽団の活躍や、プログラムの解説があった。
このプレトークもなかなか面白くて、マエストロの楽団への愛をひしひしを感じる。各曲の解説もわかりやすく、聴きどころもしっかり抑えることができた。
リムスキー=コルサコフ『スペイン奇想曲』がすごかった
今回の演奏で最も鮮烈に印象に残ったのがリムスキー=コルサコフ作曲『スペイン奇想曲』だった。
パンフレットによると、この曲は5つの小曲から構成され、各楽器の能力が存分に発揮できる作品だということだった。
リムスキー=コルサコフ - スペイン奇想曲 Op.34 アンタル・ドラティ ロンドン響
指揮者が拍手に包まれながら台に立ち、タクトを構えると拍手の音が僅かに弱くなった瞬間に勢いよく演奏が始まった。
拍手が鳴りやむのを待たずに始まった音楽は、まるで聴衆から祝福されているような、心から歓迎されているような、一心に愛を受けているように感じた。
5つの小曲のうち、4曲目の「シェーナとジプシーの歌」では様々な楽器がソロで演奏する部分がある。始まって間もなく、ヴァイオリンのソロパートがある。この時のコンマスのかっこよさと言ったら言葉にできないほどだ。情熱的で繊細で、力強い。大変印象的だった。
リムスキー=コルサコフ: スペイン奇想曲:第4曲 シェーナとジプシーの歌[ナクソス・クラシック・キュレーション #ゴージャス]
「シェーナとジプシーの歌」のみの動画。1曲1曲聴くと、通しで聴いた時よりも曲の構成がよく理解できる。
その後の展開では何もかもすべてが纏まって一つの音の塊となっているように感じられた、雄大な音楽の効果で視野どころか空間が広がったような錯覚すら覚えながら聴き入った。
最後は最高潮の盛り上がりを見せる。終わってしまうのが惜しい、と思ってしまうほど心地よい興奮を感じた。
さいごに
初めて真面目にオーケストラを聴きに行ったわけだが…
凄すぎた。
演奏が終わりに近づくにつれて(拍手…拍手したい…!)と心の底から思えた。
私はものすごく素晴らしい体験をした。間違いない。
演奏が終わったあともひたすら余韻が残り続けた。心地よくて嬉しくて、幸せだった。大袈裟なようだけど、それほど感動したのだ。
こんなに素晴らしい演奏が聴けるなら、もっと早く聴きに来ていればよかった。
今回はほぼ思いつきで行った公演だったが、また聴きに行きたい。いや、絶対に聴きに行く!
…とまあちょっとカッコつけた(?)文体でいろいろ書いてきましたけど、本当によかったんですよね~。一言でまとめるなら「もう、すごく感動した!!」(語彙)
上に書かなかったことをババっと書きたい。
今まで燕尾服ってそんなに意識したことなかったんですけど、皆さん本当にかっこよく着こなしてるんですよね~。とくにマエストロの燕尾服、裏地が赤くてすっっっっっごいかっこよかった!
演奏のクライマックスになると指揮者の背中がものすごく大きく見えるんです。かっこよかったなー。最初から最後まで、楽団への愛情がものすごく伝わってきて「マエストロ」と呼ぶのにふさわしい素晴らしい人だと感じました!
あと、ハープの音色がとても美しかったです。生音だと美しいを通り越してもう「ふつくしい」の領域でした!ロビーコンサートでも「スペイン奇想曲」のソロでも大活躍!実はオーケストラの編成にハープが入ってるイメージってそんなになかったんですけど、今回の公演ではなかなかの重要ポジションって感じでした。
コンマスの方はすっごく楽しそうに演奏していて、勢いのある曲だと体が楽しそうに動いてるんです。いいなーって思いました。「ヴァイオリンってこんな演奏もできるの!?」と驚いてしまうような情熱的で繊細でかっこよすぎるソロも披露していただきました。
もう何もかもすべてが素晴らしい定期演奏会だったので、このクソ田舎にはもったいないのではないかと思ってしまうほどでした…。もっとこの県の売りにしてもいいのでは!?
これを書き始めたのは演奏会の次の日からなんですが、書き上げるまでに数日経過してしまっているため若干当初書きたかったことが薄らいでしまっている感があります。とくに『スペイン奇想曲』…。いや、ホントにすごくて、曲の入り方から終わりまで全力で興奮しながら聴いてたんですよ。なんと言ったらいいのか、奏者全員が一体になってる様は本当にダイナミックで、とにかく圧巻されました。
あ〜、表現力がなさすぎてうまく良さを伝えられないのが悔しい…
曲の雰囲気とかはyoutubeの動画とかでも十分わかりますので、興味のある方はぜひ検索してみてください。
生演奏の迫力、奏者と指揮者の勢い、姿勢なんかはやっぱり実際に見てこそだと思いました。
どっちが本文だかわからねー量のあとがきになってしまいました!(反省