連休明けからなんとなぁく気持ちがダメな感じになっています。
自分が思っていたよりも仕事に対して緊張しているのがわかりました。「明日から仕事だー」って日の夜に仕事関係のイヤーな夢見たり、ちょっと前にあった嫌なことが頭をよぎったり。それで激しく落ち込んでいるというわけではないのですが、なんとなくダメな気持ちになっています。
そんな時に聴きたくなるのは決まって キリンジ です。
キリンジといえば『エイリアンズ』という楽曲が有名です。
が、私の中では「ダメ人間に関する歌詞を書かせたら右に出るものはいない」という素晴らしいアーティストとして有名です。…私は音楽全然詳しくなくて知ってるアーティストが数えるほどしかないせいで、基本キリンジかALI PROJECTという激狭ワールドの話になるんですけど
具体的にどんなダメ人間の歌があるのかというと、
遺産目当てに父親の葬儀に出るニートの歌(奴のシャツ) とか、
警察のお世話になっちゃう何かしらの中毒っぽい歌(悪い習慣) とか、
真夏の夜のホームレスな歌(ダンボールの宮殿) とか、
酒に酔ってグルグルしちゃってる系の歌(むすんでひらいて) とか、
とにかくまあダメ人間祭りが開催されそうなプレイリストを作れるくらいなんですよね。歌詞はすごいけど名曲だらけですよ。
というわけで、上記の4曲について主観たっぷりに書かせてくださいね。
記事の性質上 一部歌詞を引用しています。不慣れなため、著作権的にマズい部分があればどうかご指摘お願いします。
奴のシャツ
アルバム『For Beautiful Human Life』の1曲目。どうせキリンジ的ジョークである。そこがよい
作詞作曲は堀込高樹。こんな曲を書けるのは堀込兄しかいない。私はそう思っている。
平日にも関わらずプラプラしている男が、遺産があればしばらくしのげるからと父親の通夜に出向く。
「俺だけのシャツの着こなし。姿見の前を逃げ出し
ボタンを掛け違えたまま年をとるのは切ない。」
作詞作曲:堀込高樹 『奴のシャツ』より引用
結局このニートは自分のことにすら 真面目に向き合えないまま、ボタンを掛け違えたまま生きていくのだ。
本当に切ない。なんだか切ない。
「あ~、俺はいったいどこで間違えたんだろうなぁ。」って、心のどこかでいつも思いながら、それでも生きていくしかなくて、ダメな自分を直視してしまえば辛くなってしまうから深刻にもなれない。そんな心境が感じられます。つらい
サビ部分で出てくる“ボタンを掛け違えたまま”という表現が大好きです。
割とハードボイルドな雰囲気の曲なんですが、音楽がフェードアウトした後に謎のコーラスっぽいのが入ってて、そこがなかなかゾッとします。散々目を背けてきたのに…あー…みたいな。
アルバム『For Beautiful Human Life』にはこういうシビアな感じの“誰かの人生”を書いた曲が入ってて、全体的にちょっと暗めなんですよね。「ハピネス」とか「嫉妬」とか、一聴の価値のある胃痛ソングです。なお共に作詞作曲は堀込高樹である
4曲目「愛のcoda」はキリンジの中でも屈指の名曲ですし、9曲目の「the echo」はとてもカッコいい曲なのでもっと知れ渡ってほしい。
悪い習慣
大好きな曲です。
『スィートソウルep』の5曲目。作詞作曲は堀込高樹。安定している
全体的に歌詞が秀逸すぎて「あ~、ダメ…なんてダメ人間って感じなんだ…」ってなる。
何か(おそらく酒)に溺れてしまった人が、後ろめたさを感じながらもソレから抜け出せずにいるという、救いようのない物語。
抜けだせないまま朝が来る
打ちあけられない夜に泣く
作詞作曲:堀込高樹 『悪い習慣』より引用
罪悪感にまみれながらも決して逃れられない感じが「ぐえ」ってなる。歌詞が一言一句すべてガツンとくるので、一部抜粋とかが本当に難しい。どれをとってもつらみがある。
サビの最後には必ず以下のフレーズが入る。
ああ、あの人に悪い気がする
作詞作曲:堀込高樹 『悪い習慣』より引用
“悪い気がする”というのがダメ人間感を高めてて大変良い。
Cパートの“見捨てないで”という切実な歌詞と、そのあとのサビの"仏の慈悲などあるものか"というあきらめたような歌詞がまた人間臭くて、 あ~つらいってなる。もう「あの人」が自分から離れてしまっているのは分かっているのに、どこか縋りついてしまっている様子がヒシヒシと伝わります。
ちなみに 『スウィートソウルep』にも「愛のcoda」が収録されています。名曲なので聴いてね
ダンボールの宮殿
アルバム『47'45"』の9曲目。作詞作曲は堀込高樹 もはや当然のように兄樹
宮殿と書いて“パレス”と読む。
全体的に退廃的な雰囲気ですが、ちらほらでてくるユニークな言い回しのおかげで何度でも聴きたくなるのがこの曲のすごいところ。魅力的でうまい表現の密度が高くて、うまみたっぷり。
「ダンボールの宮殿」でも特に印象に残るのが次のフレーズ。
支店長はここから舞い降りたのか
支店長が舞い降りてしまわれましたね。
こういうところが堀込高樹の書く歌詞の面白いところだと思っています。ストレートに書くと思わず真顔になりそうな内容でも、わずかに言い回しを変えたり、回りくどすぎない比喩で分からせたりするのが上手い。理解できた時のジワジワとくる感覚がたまらない。
負け犬は路地で嘔吐 真夏にキャメルのコート
冷たい汗の濃度が跳ねあがる夜
“冷たい汗の濃度”って言葉を一体どうやってひねり出してきたのかと感心するばかりである。
救いのない内容であるにも関わらず何度でも聴きたくなるのは、単に音楽がいいからだけでなく、聴き心地のいい言葉選びも影響していると思っています。
アルバム『47'45"』には「Drive me crazy」という曲が収録されているんですが、これも歌詞がすさまじいので、ぜひ一度聴いて「うわぁ…」ってなってもらいたいところ。
むすんでひらいて
アルバム『3』の8曲目。作詞作曲は堀込泰行。ここでようやく弟の登場である
上3つは歌詞の力の強い歌でしたが、「むすんでひらいて」は気だるげな音楽と目が回るような歌詞に翻弄されるような感覚がたまらない歌です。
酔った末に聴いていたい曲。
ティトゥリトゥリトゥリラー ティトゥリトゥリトゥリラー
トゥラーリー ティトゥリトゥリトゥリラー トゥレリラー
作詞作曲:堀込泰行 『むすんでひらいて』より引用
この呪文のようなものを歌い上げる堀込泰行の声がなんとも心地よい。何度も聴いているとこちらも口ずさみたくなってしまう魔力がある。
灯台の灯はどんなふうに
寄せては返す僕の波を手繰るか⁉
作詞作曲:堀込泰行 『むすんでひらいて』より引用
1回目のサビ後のAメロ。なんとなく感情的に盛り上がる「!?」の部分がこれまた気持ちが良い。
この後に怒涛のサビ3連発が来るんですが、永遠に終わらないのではないかと思えてくるような、ぐるぐると回り続けるような感覚になります。言葉で説明してもなかなか難しいんですが、おそらくダメな感じで酒に酔ったことのある人は「なるほど…」となるのではないかと思います。
堀込泰行は確かそこそこお酒が好きだったはずなので、「むすんでひらいて」の放つ泥酔感は彼の体験から聴き手に生々しく伝わってくるものなのかもしれません。ソースはたしかキリンジのエッセイ「あの世で罰を受けるほど」
なお「むすんでひらいて」は結構歌詞の考察めいたものや、音楽の良さについて書かれている方が多いので、気になる方は調べてみると面白いと思います。私の書いているコレよりは他の方のほうがわかりやすく書かれているはずです。
堀込高樹の曲は言葉巧みでテクニックを感じさせるものが多いですが、堀込泰行の曲は感覚的に、直感的に、心地よさや快感を感じるものが多い気がしますね。
いろいろ書いてきましたが、結局音楽の魅力は文章では決して伝わらないものだと思います。しかも、今回書いたのは ほぼ私の感想ですね。さらには何日かに分けて書いてしまったので、前半と後半では熱量がかなり違うかも…でもちゃんと書ききったからえらい
まあ、この記事を読んでくださった方の中で、だった一人でもキリンジの楽曲に興味を持ってくださった方がいれば、それで十分です。おつりがくるレベルです。