KIRINJI のデジタルシングル『Rainy Runway』が6月の下旬にリリースしています。
実はリリースしてしばらく この曲の存在を知らなかったのですが、ある夜 酔った頭でなんとなくキリンジを聴こうと思って、せっかくだから新しい曲を聴いてみたのです。
キリンジの「雨」をキーワードとした曲は名曲ぞろい。
きっとこの作品もそこそこいい感じなのだろう、と軽い気持ちで聴いていたのですが…
予想を超える良曲でした。
You Tube にアップされているミュージックビデオを貼っておきます。
素敵なMVになっているのでぜひ映像付きで聴いていただきたいです。
出始めからから音が良い。どこかKIRINJIっぽい、落ち着いた音がする。
きわめて短い前奏で歌い始めるのは最近の曲っぽい感じがしますね。
薄暗い雨の日が続いているようなしっとりした雰囲気、それでいてリズミカル。
Aメロから堀込高樹らしい、情景がはっきり浮かびつつ、憂鬱そうな心情まで感じ取れそうな歌詞が続きます。
プレイバック何度も 本当はとうに飽きてる
君はずっとそこで雨宿りしてるの
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
短いAメロの後、フッと抜けて明るいメロディのサビに入ります。
英語がスパっスパっと入ってくるのが気持ちいい。
Step out
Though it keeps raining
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
雨が降っているという現状を受け止めながら「外に出よう!」と前向きな言葉を出してくれるのが心地いい。そういうところに高樹兄貴の歌詞の優しさがにじみ出る気がします。
キリンジの優しい歌詞の曲というと、私の中で第一に挙がるのが『バターのように』という曲。眠れない子に優しくそっと寄り添うような歌詞が大好きで、世界で一番優しい子守歌だと思っています。
きらめく街並み
新しい服と靴に
似合うヘアカラー試そう
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
1番サビ最後。1番Aメロでは「同じこと、同じところに留まって進めない、進む気すら削がれている」のに対して、サビでは「新しいものを身にまとって、新しい髪色を試してみよう」と変化しているのがスカッとします。曲の展開も歌詞にぴったりで、気持ちのいい盛り上がりを見せてくれます。
この辺りは「堀込高樹だー!」って感じですね。『Rainy Runway』のサビや曲全体の盛り上がり方は、キリンジの『Drifter』を彷彿とさせます。『Drifter』はもっと静かに始まって、最後のサビで大げさなくらい盛大になりますが、あの心地よさと同じものを『Rainy Runway』に感じました。
この曲のサビ、私はなんとなく80年代のダンスミュージックって感じのウキウキ感があるなぁと思っています。まあ音楽詳しくないから全然違うかもしれないし、年代も適当に言ってるだけなんですけどね
特にリズムの取り方にちょっと前の時代のダンスミュージックぽさがあるように思うのですが…。もしそうなら、最近のリバイバルブームに刺さりそうな感じですよね。
サビの終わりに印象的で特徴的なフレーズが入ります。
MVではちょうど、雨粒が音ゲーやってるところですね。ここの音もなんだか優しくて好きです。耳に残ります。
間奏部分で急に謎の海賊が出てきます。この海賊の男だけ別の時空からやってきたのかってくらい浮いているんですよね。しかし、コイツがなかなか私の涙腺を刺激してくるのです。
お風呂場で立派な船のおもちゃを手に、落ち込んだ様子の海賊。
大きな船で大海原を冒険したい夢を叶えられずにいるのか、かつて大冒険を繰り広げていたのか、彼の過去はわかりませんが、いずれにせよ今は思うような生き方ができていないようです。
2番の歌詞は頭からお尻まで全部良いです。
しょんぼりしている人や犬が次々と映し出され、みんな現状に辟易していることがわかります。
きっとまたどこかで 激しい雨に出くわすだろうが
昔より賢くタフになった僕らなら 大丈夫さ
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
この曲で特に好きな歌詞がここ。もはやこの歌詞を聴きたくてこの曲を何度も流してしまいます。
生きている限り、何度もつらいことや予想もできないようなことが起こるものです。
「でも、そんな大変な思いをするたび、僕らは賢くてタフになっているじゃないか。」
という歌詞に、確かにそうだと励まされます。
こんなにストレートに書いている歌詞なのに胸やけしないのはスゴいです。
やたらポジティブで押しつけがましいものだと疲れてしまいますが、Rainy Runwayのすごいところはさらっと優しく寄り添うように励ましてくれるところです。
何気に1番は「君」に対しての歌詞だったのに対して、2番は「僕ら」になっていて、「君」だけじゃなくて「僕」も、そしてみんなに対しての歌詞になっていますね。MVで複数の人物が出ているのも歌詞と合っています。
2番のサビでは先まで落ち込んだ様子だった人たちがどこか晴れ晴れとしている様子が描かれています。犬がかわいい。
色褪せた夢は消えてしまったよ
何処へ高気圧の空へ
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
2番サビ最後の盛り上がりで、海賊がついに小さな船で海へと漕ぎ出します。
彼に必要だったのは大きな立派な船じゃなくて、小さな船でも『海へ出る』ということだったんですね。なんかよくわからないけど、ここでちょっと感動しちゃいます。
この部分の歌詞ですが、年を取り、時代が変わっていく中で、その人の夢もどんどん変わっていっていいものなんだ、ということを言っていると解釈しました。
いつまでも昔見ていた夢に縛られてばかりいては前へ進めないですからね。
そしてラスサビへ進行。
2番サビの盛り上がりから地続きなので、同じサビでもどこか晴れ晴れした雰囲気。
素敵な予感しかない!
KIRINJI『Rainy Runway』より引用
曲の最後を締めくくる言葉。未来に期待をするようなとても前向きな言葉で、この曲を語る上で最も大切なキーワードだと思います。
これを気持ちよく言うために今までの部分があったといっても過言ではない。
ここの兄樹の歌い方も心地よくて、余韻に浸りながら印象的なメロディーが流れ、曲が終わります。
『Rainy Runway』は全体的に耳なじみの良い優しい音がなっていて、聴いていて疲れません。盛り上がり方も「さすが KIRINJI !」といった気持ち良いものになっていますし、歌詞も素晴らしいです。
それから、この曲はすべて堀込高樹が歌っているのですが、なんかめっちゃ歌うまいな!?って思いました。いつも以上に聴かせる歌い方をしているというか、自然と「あ~いいな~」って感じるんですよね。
特にサビの『颯爽と歩けば~』の伸びから『誰もが』のところがとても好きです。
『ば~』の伸ばすところでクレッシェンドがかかっているのか、『誰もが』でフッと抜ける感じがめちゃくちゃいいんですよ。
聴けば聴くほど、そういう細かい部分をもっと味わいたくなってしまうんですよね。
バンド体制のころのKIRINJIは歌詞にしろ音楽にしろ「面白い曲」が多かった印象があるんですが、一人になってまたちょっと雰囲気の違う「聴かせる曲」がでてきたなーと思いました。キリンジ時代からの正統進化を感じます。
長々と語ってきましたが、『Rainy Runway』は「KIRINJIいいよ!聴いてみて!」と胸を張っておススメしたい曲です。ぜひ聴いてみてくださいね!